「公正な社会では最良の情報を得るものが勝つ。しかし、私たちは公正な社会を相手にしているわけではない。私たちは、敵が戦いに使うツールと同じツールを使って戦う必要がある。そしてもっと賢く、もっと巧妙にやらなければならない。成功した革命はすべて、上からではなく、下から始まったという事実を忘れてはいけない」

― イヴォン・シュイナード パタゴニア創業者

1994年、アメリカで開催されたパタゴニアの「Tools for Grassroots Activist– 草の根活動家のためのツール会議」は、環境保護グループに単に資金提供する以上の支援を行いたい、パタゴニアの持つ資産を緊急な環境問題の解決のために活用したい、という願望からスタートしました。アメリカでは18か月ごとに開催され、今年5月の開催で第10回を迎えました。

そして、今週末、日本初開催となる 「Tools for Grassroots Activist- 草の根活動家のためのツール会議」がPICA山中湖Villageにて行われています。


オーガニックファーム、バイオジオフィルター、有機食材のレストラン、自然素材のゲストロッジなどさながらエコビレッジのモデルスペースのようなPICA山中湖Village。参考になります。

greenzチームは、とっても光栄なことに、日本での開催にあたり企画の構想段階からかかわらせて頂き、講師の選定やテーマ・トピックのディレクションなどをお手伝いさせてもらってます。

コンセプトとしては、経験豊かな専門家と環境活動家を講師に招き、より効果的な環境アクティビストなる秘訣を学んでもらうこと。NGO、NPOの世界に限らず、ビジネスの世界でも、効率よく行動するには、効果的な戦略を構築し、メッセージを明確化し、そのメッセージを伝えるための妥当な手段を見つける必要があるわけです。けれども道具箱に適切なツールがなければ、効率よく行動することができない。そこでパタゴニアとしては、今回の「第1回 草の根活動家のためのツール会議 in 日本」は、日本支社においても単に環境助成金プログラを通じて資金を提供するだけでなく、助成先に組織の運営ノウハウやスキルを高めてもらい、より効果的に活動に取り組んでもらいたい、という想いが込められています。

そして、この「ツール会議」こそが、パタゴニアの理念、つまり


「ビジネスを手段として環境危機に警鐘をならし、解決に向けて実行する」

を表現していると言えるのではないでしょうか。

最前線で活躍している環境NGOを3日間のワークショップに招待し、さまざまな知恵やスキルを学んでもらう機会を提供している企業は、日本において(おそらく)パタゴニアしかいないのでは、と思います。それぐらい、このワークショップは歴史的に意義のあるものだと思います。

詳しいワークショップの内容は後日パタゴニアホームページ、greenzに掲載されると思いますので、お楽しみに。

それにしても。

大尊敬するビジョナリー、イヴォンにインタビューしたときは想像もできなかったけど、こうしてパタゴニア社と一緒にお仕事ができるところまでgreenzもようやくきたと思うと、なんだか感動的です。


パタゴニア日本支社・支社長ビル・ヴァーリン氏とgreenz YOSH, HIROMI, PERO

以下、ツール会議のアジェンダです。
*講師のプロフィールは下記にあります。

● 基調講演Ⅰ「Reason for Hope – 根を張り、芽を出すとき」 
   ジェーン・グドール博士(国連平和大使/霊長類学者)
● 環境NGOにとっての”ツール”とは?
  ビル・ウァーリン(パタゴニア日本支社・支社長)
● ワークショップⅠ「組織の存在意義を知る」
  広石拓司氏(株式会社エンパブリック代表取締役)
● ワークショップⅡ「コミュニケーション-組織を表現する」
  鈴木菜央氏(greenz.jp編集長/株式会社ビオピオ取締役)
● ワークショップⅢ「キャンペーン戦略-成功への道」
  坂本文武氏(ウィタン・アソシエイツ株式会社取締役)
● ワークショップⅣ「ワーク・スマーター-組織を活性化させる」
  廣水乃生氏(コミュニティファシリテーション研究所)
● プレゼンテーション「インターネットの活用方法」
  但馬武(パタゴニア日本支社/ダイレクトセールス・マネージャー)
● プレゼンテーション「ビジネスと協働する-パタゴニアの支援プログラム」
  篠健司(パタゴニア日本支社/環境プログラム・ディレクター)
● プレゼンテーション「ロビー活動をどう展開するか?-MY政治家という考え」
  マエキタミヤコ氏(サステナ代表)

参加者団体は、こんな感じです。

エコアクション虔十の会
上郷開発から緑地を守る署名の会
国際環境NGO FoE Japan ロシアタイガプログラム
三陸の海を放射能から守る岩手の会
自然の権利基金
たまあじさいの会
日本の海岸環境を守る会
熱帯林行動ネットワーク
北限のジュゴンを見守る会
ホタルのふるさと瀬上沢基金
馬毛島の自然を守る会
八重山・白保の海を守る会
吉野川みんなの会
リバーポリシーネットワーク


講師プロフィール

ジェーン・グドール
国連平和大使/霊長類学者 1934年イギリス・ロンドン生まれ。古人類学者ルイス・ルーキーの薦めで26歳の時よりタンザニア・ゴンベの森にて野生チンパンジーの調査を始める。チンパンジーが道具を作り・使うという事実を世界で初めて発見するなどの目覚ましい成果をあげ、チンパンジー研究の第一人者となる。1977年にジェーン・グドール・インスティテュート(JGI)を設立。現在、JGIの活動は多岐にわたり、チンパンジー保護と環境教育にはとりわけ大きな力が注がれている。な かでも、若い世代を中心とする自然保護活動プログラム「Roots & Shoots」は 主要な活動の一つで、世界100カ国で展開されている。これらの活動を称え、2002 年国連より「国連平和大使」に任命され、京都賞(1990)、ベンジャミン・フランク リンメダル(2003)をはじめ60近い賞を受賞。2004年には英国エリザベス女王より DBE(大英帝国爵位)に叙せられた。主な著書『野生チンパンジーの世界』(ミネルヴァ書 房)、『森の隣人』(朝日選書)、『森の旅人』(角川書店)など。

広石 拓司
1968年大阪市生まれ。東京大学薬学系修士課程終了後、三和総合研究所(現 三菱UFJリサーチ&コンサルティング)入社。97年、ED ! SON(市民生活室)を立ち上げ、市民参加の社会デザイン、企業と顧客のコミュニケーション事業の開発に取り組む。01年よりNPO法人ETICに参画し、社会起業家の育成に取り組む。主宰する「社会起業家事業開発ワークショップ」の受講生は全国15地域、1,000名を超える。書籍「好きなまちで仕事を創る」(TOブックス)編集長、NIKKEI NET連載コラム「20代から始まる地域イノベーション」など、次世代地域づくりに関する執筆も多数。08年5月、株式会社エンパブリックを設立。一人ひとりの経験や知恵、アイデア、思いという資源を発掘し、それをワークショップやサークル活動として形になり、社会に流通していく「市民社会のバリュー・チェーン」のための技術と仕組みの研究開発、普及に取り組む。同時に、empublic根津スタジオにおいて、コミュニティ活動のスキルのためのワークショップ、学びサークルの立ち上げ支援を実践している。NPO法人ETIC.シニア・フェロー、NPO法人えがおつなげて理事、慶応大学SFC研究所上席所員(訪問)。

鈴木 菜央
greenz.jp編集長。株式会社ビオピオ取締役。1976年バンコク生まれ。6才より東京で育つ。2002年より3年間「月刊ソトコト」にて編集・営業として勤務。2005年に独立し、以降アースデイ東京公式ライフスタイルガイドブック「地球の日の歩き方」編集。2006年「エコスゴイ未来がやってくる」をテーマにしたメディア「greenz.jp」公開。2008年株式会社ビオピオ設立。各媒体へのエンタメ系環境ニュースの提供、企業の環境マニュフェストや環境・サステナビリティをテーマにした紙媒体の編集・ディレクション、社会的キャンペーンのディレクションなどを手がける。

坂本 文武
早稲田大学卒業後、米国ケース・ウェスタン・リゼーブ大学にて非営利経営修士号を1999年に日本人としてはじめて取得。その後、アメリカにて現地法人の長期戦略策定、事業評価、理事会機能の強化などのコンサルティングを経て、日本に帰国。2001年よりアースセクター株式会社にて企業の社会的責任(CSR)に関する企画提案、NPOへ経営支援を行う。現在、PR会社ウィタン・アソシエイツにてPRコンサルタントとして企業へのPRとCSR(企業の社会的責任)コンサルティングを行う傍ら、CSRやNPO経営に関する講師、講演、執筆活動を行う。著書に『NPOの経営』(日本経済新聞社、2004年)、『ボーダレス化するCSR』(同文館、2006年)などがある。立川市行財政問題審議会審議委員、中野区区民公益活動推進協議会委員、経済同友会NPO・社会企業委員会ワーキングメンバー、NPO法人ソーシャル・イノベーション・ジャパン理事など。

廣水 乃生
1968年生まれ。東京芸術大学大学院教育学研究科終了後、7年間にわたって教師を務める。教育を通して人と人のコミュニケーションに興味を持ち、教諭を退職。米国プロセスワーク研究所にて葛藤解決・組織改革ファシリテーション・マスターコースを修了する。その後ファシリテーションスキルを日常生活に活かすための講座や人々が社会的な立場を超えて交流する場「オープンフォーラム」を企画するなど様々な活動を企画実施している。

マエキタミヤコ
1963年東京生まれ。環境NGOのための広告メディアクリエイティブ「サステナ」代表。広告表現制作責任者、コピーライター、CMプランナー。1994年よりNGOの広告に取り組む。97年「NOWARぬりえピースプラカード」、100万人のキャンドルナイトなどで、NYTDC賞、東京TDC賞、準広告電通賞、日経「話題になった広告」、グッドデザイン賞など受賞。女性のためのエコライフスタイル誌「エココロ」編集主幹。テレビ朝日「素敵な宇宙船地球号」番組内「エココロテレビ」企画監修。「ぬりえピースプラカード」新聞広告で準広告電通賞など多数受賞。「100万人のキャンドルナイト」よびかけ人代表。「ほっとけない世界のまずしさ」キャンペーン2005実行委員。最近は「フードマイレージキャンペーン」や「リスペクト・スリーアール」プロジェクトも手がけている。主著『エコシフト』(講談社現代新書)、『でんきを消して、スローな夜を』(監修/マキノ出版)『100万人のキャンドルナイト』(監修/ブルーオレンジスタジアム)『世界から貧しさをなくす30の方法』(監修/合同出版)。東京外国語大学Peace&Conflict Studies「PeaceAd」助教。立教大学・上智大学非常勤講師。

ビル・ウァーリン
コロラド州立大学卒。1970年フリーランスのセールス・レップとしてキャリアをスタート。1973年、米ノース・フェイス社に入社。1987年ゼネラル・マネージャーとして米シエラ・デザイン社に入社。社長に昇進し統括指揮を執る。1989年ノース・フェイス社に社長として就任。1995年アクション・スポーツ・グループ社長。アウトドア産業による環境保護基金である米コンサベーション・アライアンス会長、米アウトドア・レクレーション連盟設立メンバー等を歴任。2000年にパタゴニア社の日本支社長に就任。