前回のブログで書きましたが、フランスとスペインにて開催された
Global Wave Conference のスピーカーの一人として
3.11 以降の日本の現状、海の状況、サーファーの動向などを
お話させて頂く機会をもらいました。

日本のみならず、世界に山積する海洋汚染や海岸保護の
問題を提起し、その解決策としてのセオリー、フレームワーク、
アクションなどが紹介されました。

サーフライダーとミッションを同じくする団体や同志が
一同に会したことははおそらく世界初の試みで
その様子はライブ配信され、日本でもご覧になった方も
いるかもしれません。
*全てのプレゼンテーションはウェブ上でみれますよ。

参加したNGOは、
日本、アメリカ、オランダ、フランスより Surfrider Foundation,
イギリスよりSurfers Against Sewage
ポルトガルよりSalvem O Surf,
アメリカよりSave the Waves Coalition
メキシコより Wild Coast
オーストラリアよりNational Surfing Reserve
南アフリカより Save Our Seas
と実に多彩な顔ぶれ!その他にも、科学者、社会学者、法律家、大学教授、
メディアパーソン、などが登壇し、それぞれの知見から以下の3つのテーマに
ついて発表がありました。

How Do You Define The Value of a Wave, and by Extension, of Nature?
(波、海、自然の価値はどのように定義できるか)
What Are the Threats Facing the Waves?
(波、海、海洋環境を取り巻く問題は何か)
Which Strategies Can Be Put into Place to Protect them?
(それらの問題を解決、海を保護するための戦略は何か)

最初にこのテーマを見たときに、私は正直、
「自然を科学で定義し、価値付けようとする、西洋的な
アプローチ、思想だなあ」と思いました。そして、このテーマに関連づけて
震災以降、放射能で汚染されてしまった日本の(いまでは
太平洋まで拡散していますが)海の現状をどう定義すべきか
何をみんなに伝えるべきか、最後の最後まで悩みました。
当日の朝までスピーチの内容を考えていました。

みんなは何を知りたいんだろう
みんなの認識はどんな感じだろう
みんなの知識レベル(原発、放射能のこと)はどれくらいだろう

伝えたいことは山ほどあったし、人前で話すのも
わりと平気なタイプだけど、今回ばかりは(感情移入しすぎて)
ちゃんと伝えられるか不安もあったので、
事前に考えに考えまくって、言葉一つひとつを
丁寧に選んでスクリプトをかきました。

できるだけ、私の素直な気持ち、
私たちが置かれているおかしな日常を等身大で
感じ取ってもらえるように、私のストーリーを
語るようにしました。

かなりお恥ずかしいですが、そのときの様子は、こちらの
映像をご覧ください。要望が多くあったので、近日中に
日本語字幕が入ると思います。


Hiromi Matsubara, CEO Surfrider Japan @ Global… 投稿者 SurfriderEurope

伝えたかったのは、
ある日突然、放射能という目に見えない、臭わない、
得体の知れないものが日常生活にやってきて
海だけじゃなく、空気も、土も、食べ物も
全てが汚染されてしまっているという現実。

伝えたかったのは、
チェルノブイルの事例はあるけど、私たちがいま直面している
問題の本当のスケールと核心、解決の糸口なんかまだ本当のところ
きっと誰もが模索しているところで、定義のしようがないってこと。

伝えたかったのは、
世の中には数値化できるものと、できないものがあって
海や波を観光/レジャー的資源として多角的に分析するのも
斬新なアプローチで有効だとは思うけど(それが今回の
カンファレンスの目的ではあったにせよ)、
人間は自然の一部であって、それをそもそも定義付けしようと
するのは東洋思想的には馴染みづらく、今回の震災は
想像を超える出来事であったこと

偉そうなことも、おおげさなことも言うつもりもなかったけど
私というニッポン人を通して、ニッポンのいまをより
身近に感じ取ってもらって、新しい気づきや
価値観をもってもらえたらと、思った。

スピーチをしている最中、会場にいる人の数人が
泣いているのを見て、思わずもらい泣きしそうに
なったけど、(時間をオーバーしながらも)
伝えたかったことは、ハートから伝わったんじゃないかと思うように
している。

残念ながら、いまだ収束の目処がたっていない
原発によって、放射能汚染は蓄積、拡散し
太平洋を渡っている。
日本国(というより東電)が犯した罪で
諸外国に対して申し訳ない気持ちでいっぱいだけど
こうなってしまった以上、これはグローバルクライシスだと思う。


NZの調査会社による放射能の海洋拡散シミュレーション。11月11日現在

地震と津波は天災で、自然の猛威を目の前に
人間はとても無力でいつかは復興できると信じられるけど
原発事故は明らかな人災。

サーファーなら誰もが知っているように
海はひとつ、全てはつながっている。だから、この問題に対して
できることならみんなの理解を得て、サポートを得て
いまできることをやっていきたいと、切実に願って
スピーチにその想いを込めました。

房総にいる自分はまだ恵まれていると言える。
避難したくても避難できない福島の人たちや
全てを失った被災地の人たちのことを考えると。

ただ、3.11前と後では、あらゆることに対するリスク
への考え方、意識がかわった。

「これを食べていいのものかどうか」
「いま、海にはいってサーフィンしたらどうなるか」
「ここに住んでいて大丈夫か」

直ちに健康に影響があるわけではない

というのはわからなくもないけど、問題はそこじゃない。

いつもいつも、こうしたことを気にしているわけじゃないけど
(気にしていたら発狂してしまう!)数年後たって、自分や自分の家族に
何か健康被害があったときに「もしかして」とだけは思いたくない。

そして、いつだって、アタマの片隅には、何かあったら避難しよう、
と考えている弱くて卑怯な自分がいるのも確かだ。

でも、自分にはまだできることがあるような気がして、
きっと、何かミッションを与えられたからこの場にいて
この仕事をしていてこうして今を生きているのだから
それをやれるうちはやっておきたい。

カンファレンスでたくさんのハグと励ましと
笑いと感動をくれた仲間の暖かさに感謝しつつ、
出会えた人たちとのネットワークを駆使して
大好きな海を守っていくために、やれることを
やるだけです。

<面白かったオススメのプレゼン動画です> Neil Lazarow. The Value of Waves 社会学者ニールによる、サーフィンというスポーツ・レジャーの 価値を社会学的に分析し、サーファーの生態調査(サーフィンをする理由、 サーファー人口、年収など)のデータ発表。
Neil LAZAROW, The Value of Waves 投稿者 SurfriderEurope

Gregory Lemoigno. Creating the Platform for Surfing to
Become an Intangible Cultural Heritage as Defined by UNESCO
サーフライダーヨーロッパが中心となってUNESCOと進めている
サーフィンを無形文化遺産にしようとしているプロジェクトの紹介


Gregory Lemoigno, Creating the Platform for… 投稿者 SurfriderEurope

Brad FARMER, Surfing Reserves in Australia
オーストラリアのサーフィン保護区の事例紹介。


Brad FARMER, Surfing Reserves in Australia 投稿者 SurfriderEurope

Andy Cummins, Sewage & Access
イギリスのNGO Surfers Against Sewageが開発した携帯アラートアプリは
下水処理場から海への汚泥放水がある日は予め携帯メールがなり、
海の汚染状況をリアルタイムで知らせてくれるというもの。


Andy Cummins, Sewage & Access 投稿者 SurfriderEurope

おまけ

会議は、英語、スペイン語、フランス語、で行われ、同時通訳
が入りました。会議中、終止一緒にTwitterで実況中継していたジム
(SF本部CEO)がかけているのは本来イヤホンセット

サンセバスチャンの会場の外では、この日スウェルが到来!
会議終了後、速攻でウェットに着替えて日暮れまで
波乗りの満喫したのは言うまでもありません。プレゼンの
緊張から解放されて乗ったアタマ半オーバーの波は、はい、
最高のひとこと。